成原漢方薬局

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漢方日記

2014.10.01

水曜日は定休日 一休み 一休み

「 いいか、初日の芝居が最後まで終わって

 オペラカーテンが閉じていく 」

「 カーテンが閉じても、客席からはなにも聞こえねえ。

 拍手どころか、咳一つねえ。

 しん・・・と、静まりかえっている。

 オレたちは、みんな蒼白になる。

 しまった、ダメだった、失敗した、どうしよう・・・」

 ミックが、悲しそうに目をつぶる。

「 そしたら、ぱちん・・・と一つだけ拍手が、聞こえるんだよ。

 また、ぱちん、ぱちん、と聞こえた。

 まばらな拍手が、少しずつ、起こるんだ。

 少しずつ、少しずつ、拍手の数が増えていく。

 まるで、遠くからなにかが近づいてくるような・・・

 ああ、何人かは、オレたちの芝居を観て

 楽しんでくれたんだ。よかった。

 そう思ったつぎの瞬間だ。

 まるで、地の底から噴き上がってくるような振動が、

 ぶわーっと 」

 ミックが目を見ひらき、

 両手を高々とあげた。

「 劇場を揺らすんだ。

 いままで、聞いたこともねえような、

 嵐みたいな凄い拍手だ。

 それだけじゃねえ。

 うおおおーって、唸りとも、歓声とも知れねえ声が、

 分厚いカーテンを震えさせる。

 やがて、カーテンコールだよ。

 カーテンがひらく。

 目の前の客席に、座っている客なんて、一人もいねえ。

 みんな立ち上がってる。

 目は真っ赤で、でも、

 この上なく満足そうな笑顔で、手を叩いている。

 オレたちは、客席から伝わってくる

 バイブレーションを、全身で受け止める 」

 ミックが、両手を大きくひろげ、

 感極まった表情で、目を閉じる。

 ・・・俺は、本気で感動してしまった。

   『 ゴールデンタイム 』  by 山田 宗樹

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