2015.01.07
父。お父さん。
物心ついたころから、ほとんど家にはいなかった。
母は、「 お父さんは仕事でいそがしいのよ 」 と言っていて、
わたしもしばらくは、それを信じていた。
たぶん、サンタクロースを信じるぐらいのあいだは、
信じていたと思う。
いつごろからか、わたしは事実に気づいていた。
父は、まともに働いていない。
あれは、自分を律することのできない、
だめな人間なのだ。 『 柘榴 』 by 米澤 穂信