「 私も改宗したの。ユダヤ教徒は、ユダヤ教徒としか
結婚出来ないらしいから。」
「 かいしゅう?」
母は今度こそ大きな声を出した。だが、
怒っているのではなく、ただ驚いているのだということは
分かった。
僕は、母が姉を怒ることはもうないだろうと
思っていた。
例えば、アマゾン川流域で、未知の部族に嫁いだと
言われても、性転換した姉が( 兄か?)
現れても、母はもはや諦めをもって姉を見ているだけだろう。
受け入れるのではない。かといって、
積極的に反対することもない。
それほど姉は、ずっと何をしでかすか分からない子で
あり続けたのだ。
「 じゃあ、貴子ちゃんは、ユダヤ人なんやね 」
「 そう、ユダヤ人 」
『 サラバ 』 by 西 加奈子