私の担任の西田先生は、ある時父に、
「 息子さんの成績は、あまりにひどい。ご両親とも小学校の先生だったのだから、
少しは、家で勉強を見てやられてはどうですか。」 と、忠告した。
これは、私が、社会人になってから、西田先生に聞かされて知ったことなのだが、
そのとき、父は、こう言ったという。
「 残念ながらウチの子は、『 金 』ではない。
勉強でもほかのことでも、人より劣る。それでも、親が勉強を見てやれば、
一応の格好は、つけられるだろ。
でも、それは、鉄に金メッキするようなものだ。
メッキは、いずれ、はがれる時がくる。
それこそ、本当に当人にとって悲劇だ。
それより、鉄は鉄として、メッキせずにどう生きていけるのか、
それを、もがいて、探させた方がいい。
今は当人にとってキツくても、
人生の出発点にこそ、自分はしょせん鉄なんだと、
身にしみてわからせたほうがいい。」
by 中坊 公平