たしかに難問だった。
死体の身元が判明すれば、警察は
間違いなく、靖子のところへやってくる。
刑事たちの執拗な質問攻めに
彼女たち母娘は耐えられるか。
脆弱な言い逃れを用意しておくだけでは
矛盾点をつかれた途端に破綻が生じ、
ついにはあっさりと真実を吐露してしまうだろう。
完璧な論理、完璧な防御を
用意しておかねばならない。
しかも、今すぐそれらを構築しなければならない。
焦るな、と彼は自分自身に言い聞かせた。
焦ったところで問題解決には至らない。
この方程式には解はある。
石神は瞼を閉じた。
『 容疑者Ⅹの献身 』 by 東野 圭吾