2016.03.16
「 こんにちは 」
と、彼女は弾むような声で言った。
「 おでかけですか 」
「 そうだ。駅の近くまで送ろう。乗りたまえ 」
彼女はブルーバードの前をまわって、
助手席に乗り込んできた。
「 仕事ですか 」
「 そう。あまりにも金をせびらない息子の
素行を調べてくれという、親からの依頼だ 」
「 親ってそんなことまで心配するんですか 」
『 愚か者死すべし 』 by 原 尞