おれは悲壮なことはいやだ。
禁欲的なことも嫌いだ。
健康のため、美容のため、などと言って、
街を走っている人の姿を見ると、
おれはなんだか気が滅入る。
グロテスクなものを見た気になる。
そんなにまでして長生きしたい世の中じゃないだろうに、
などと毒づきたくなる。
そのくせ、おれは自分の腹の肉の、
日増しに厚くなる気配に怯え、
糖尿病を恐れているのだから、矛盾に満ちている。
ジョギング愛好家を毒つきたくなるのは、
まちがいなくおれ自身の怠情な心をごまかすためなのだ。
われながら、いい加減な人間だと思う。
『 迷路に花束 』 by 勝目 梓