2016.09.14
思いがけなく早く、事態は動いている。
うまくいったと高をくくりはじめると、
破綻はきちんと用意されていて、
足払いをかけるように行方に突然姿を現す。
何かを突破するということは、こういうことなのだ。
おそらく、次から次と、漆黒の闇が、
姿を見せて自分たちを飲み込もうとするのだろう。
雅子は、しばらく、
芯の固い鉛筆の先を細心の注意で
尖らせるように、神経を張りつめさせていた。
『 OUT 』 by 桐野 夏生