涙が出そうなほど嬉しかった。
木之内はわたしという存在をすべて肯定しようとしてくれているのだ。
そんな人は、親以外にいなかった。
人間は、誰かに認められることが大事なのだと初めて知った。
認められることで、生きてゆく活力が湧く。
自分にも取り柄があるのだと、
自己否定の泥沼から抜け出せる。
木之内は、わたしを肯定してくれた。
わたしという存在に、執着してくれた。
わたしが最も必要としていた全面的肯定。
それを与えてくれた木之内には、
いくら感謝しても足りない。
たとえ明日、この関係が終わったとしても、
わたしは一生感謝し続けると心に誓った。
『 新月譚 』 by 貫井 徳郎