「 工藤邦明氏は、誠実で信用できる人間だと思われます。
彼と結ばれることは、貴女と美里さんが幸せになる確率を
高めるでしょう。
私のことはすべて忘れてください。
決して罪悪感など持ってはいけません。
貴女が幸せにならなければ、私の行為は
すべて無駄になるのですから 」
読み返してみて、また涙が出た。
これほどの深い愛情に、これまで出会ったことがなかった。
いや、そもそもこの世に存在することさえ知らなかった。
石神のあの無表情の下には、
常人には、底知れぬほどの愛情が潜んでいたのだ。
『 容疑者 X の献身 』 by 東野 圭吾