豊田市  漢方薬

快晴です。

寒いです。

[ 怒り ]  by  吉田修一

明日香は、当時付き合っていた男の家を出て

遼のアパートで暮らし初めた。

これまでにも、繰り返してきたことだったが、

この時だけは何かがちがった。

それまでは、どこで暮らし初めても、

そこが、隠れ家のようだったのに

遼と暮らすアパートだけは、その隠れ家から

やっと外へ飛び出せたような何かがあった。

ここ、気がいいんだよ。

と、遼は笑った。

そういうのに、詳しいの?

ぜんぜん、でも、俺、分かるんだ。

明日香も、この部屋と一緒で、気がいい。

私が? 何、それ。

とにかく、俺には、分かるんだ。

遼は、そう言って、自信ありげに笑った。

中学のころから、家出を繰り返すようになって以来、

ずっと頭の上で、雲っていた空か、

突然、晴れたようだった。

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