R.2.5月6日(水)
雨です。
豊田市 漢方薬
❮ ゴールデンタイム ❯ by 山田 宗樹
いいか、初日の芝居が最後まで終わってオぺラカーテンが閉じていく。
カーテンが閉じても、客席からはなにも聞こえねえ。
拍手どころか、咳一つねえ。
しん – – – -と、静まりかえっている。
オレたちは、みんな蒼白になる。
しまった。ダメだった。失敗した。どうしよう。
[ ミックが悲しそうに目をつぶる ]
そしたら、ぱちん – – – -と一つだけ拍手が聞こえんだよ。
また、ぱちん、ぱちんと聞こえた。
まばらな拍手が少しずつ起こるんだ。
少しずつ、少しずつ拍手の数が増えていく。
まるで、遠くから何かが近づいてくるような – – – -。
ああ、何人かは、オレたちの芝居を観て楽しんでくれたんだ。よかった。
そう思ったつぎの瞬間だ。
まるで、地の底から噴き上がってくるような震動が、ぶわーっと。
[ ミックが目をひらき、両手を高々とあげた ]
劇場を揺らすんだ。
いままで聞いたこともねえような、嵐みたいな凄い拍手だ。
それだけじゃねぇ、うおぉぉぉーって、唸りとも歓声とも知れねえ声が、
分厚いカーテンを震えさせる。
やがてカーテンコールだよ。カーテンがひらく。
目の前の客席に座ってる客なんて一人もいねぇ。
みんな立ち上がってる。
目は真っ赤で、でもこの上なく満足そうな笑顔で、手を叩いている。
オレたちは、客席から伝わってくるバイブレーションを全身で受けとめる。
[ ミックが両手を大きくひろげ、感極まった表情で目をとじる ]
– – – -俺は本気で感動してしまった。
豊田市 漢方薬