「 エボラ出血熱は、人類が遭遇した中で
最も危険な感染症だ。
ウィルスが体の中に入り、
脳を含めたすべての細胞に取り付いて食い破る。
生きたまま、内臓や筋肉が溶かされた状態になるんだ。
感染者は、耳や鼻、口か肛門、それに毛穴までを含めた
すべての孔から、
ウィルスに汚染された体液を噴き出させて、死亡する。
エボラ・ザイールの致死率は、九十パーセントだ 」
「 この病気の治療法は?」
「 ない。感染したら、神に祈るしかない 」
「 致死率が九十パーセントと言ったが、
残りの十パーセントはどうなるんだ?」
「 体の免疫力が打ち勝って、無事に生き残る 」
「 その病気は、どうして世界中に
広まらないんだ? HIV みたいに 」
「 このウィルスは、潜伏期間が
短かすぎるんだ。
感染してから、約七日で発症する。
つまり、患者は、多くの人に伝染する前に
死んでしまうんだ 」
「 なるほど 」