「『 あなたは耳が聴こえるけど、それは気にしない 』って
言われたことある?」
そう書かれたメモをみせられ、
俺は、素直に首をふった。
「 私たち、いつも言われるのよ。
『 あなたは耳が不自由だけど、私はそれを気にしません 』って 」
響子の言わんとすることを百パーセント理解したとは言いがたい。
ただ、響子が伝えたかった気持ちだけは、
なんとなく、胸に突き刺さった。
響子の耳が不自由なことなど、俺は気にしない。
気にしない。
気にする。
俺は。
俺が。
『 静かなる爆弾 』 by 吉田 修一