「 あたしは駄目。できないよ、そんなこと。絶対 」
「 じゃ、金返してよ 」
雅子は、テーブル越しに手を出した。
「 金を返すことはできないよ。だから、協力するしかないね 」
「 ありがとう。師匠ならやってくれると思った 」
雅子は礼を言った。
「 でも・・・ 」 ヨシエは抗議するように顔を上げた。
「 あたしはあんたに義理があるからやるんだよ。
でも、どうして、あんたそこまで
山ちゃんのためにやるのよ 」
「 さあ、どうしてか、あたしにもわからない。
でも、あたしは、あんたが同じことをしたってやるよ 」
ヨシエは言葉も無く黙り込んだ。
『 O U T 』 by 桐野 夏生