犯罪を犯した子供の親がよく言うことだ。
親と子に対話があったら、こんなことにならなかったと、
したり顔で言う識者もいる。でも、
会話というものは簡単なものではない。
言葉をかければ会話になるわけではない。
言葉が返ってこないと、会話にならないのだ。
知らないもの同士なら、言葉をかけ合わないと
何も始まらないことが、おたがいに分かっている。
しかし、親と子は、無言のままでも暮らしていける。
それが、対話を遠ざけてしまう。
一番親しいものの会話が、
一番難しいものなのだ。
『 フランチィック 』 by 鎌田 敏夫