なじみになったサラ金の社員がいったものだ。
『 岸川さんの場合、堅い仕事をきちんとされておられるし、
第一ギャンブルにのめりこんではおられないでしょう。
当社としては、もっとも信用できるお客様なんです。
正直なところ、こんなもの利息だけ払ってりゃいいんですよ。
利用しない方がむしろ損だと思いませんか。
誰でも歳を取るんです。
楽しめるうちに、楽しまなきゃ、ですよ 』
見え透いたセールストークを、
私はあっさりと信じた。
後ろめたさをごまかすのに都合が良かったからだ。
借金の額は膨れ上がっていった。
『 月のない夜 』 by 鳴海 章