成原漢方薬局

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漢方日記

2018.06.06

定休日です。 『 月のない夜  』 by 鳴海 章

「 ある晩、その女が大泣きしましてね。

 

ひどく酔っ払ってました。凄まじい光景ですよ。

 

身長が百八十五、六センチもあって、

 

体重も百キロを超えているような顔のでかいオカマが、

 

化粧をぐしゃぐしゃにして泣くんですから。

 

声を圧し殺してね、嗚咽だけです。

 

そして私に切々と訴えるんですよ。

 

好きな人がいるけど、どうにもならないって、

 

オカマですから好きな相手というのは男ですよ。

 

でも、この女、ちょっと変わってたんです。

 

男は好きだけど、同性愛の男は駄目だったんです。

 

同類ってことですかね。

 

だから惹かれるのはそうした嗜好のない男だけですよ。

 

好きな男に抱かれたい、愛されたいって身もだえしながら、

 

もし、その男がちらっとでもあいつのことをふり返ると、

 

たちまち駄目になってしまう。

 

百年の恋も冷めるってもんじゃないらしい。

 

よくも私を裏切ったと憎悪の塊りになるんだそうです。

 

矛盾でしょう?その矛盾に苦しんでいる自分を憐れんで、

 

また、泣くんですよ 」

 

   『 月のない夜 』  by 鳴海 章

 

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