『 与える木 』
あるところに、1本の木が生えていた。
木は、ある少年を可愛がっていた。少年は、毎日
木のところに来て遊ぶ。
枝でブランコをしたり、りんごの実を食べたり
木陰で眠ったり、彼は木が大好きで、木も幸せだった。
だが、時がたち、成長した彼の足は遠のく。
木は、独りになることが多くなった。
ある日、彼が来て、遊ぶためのお金が欲しいと言う。
木は、りんごの実を売ってお金をつくるように勧めた。
彼は、りんごの実を採って去る。
木は、幸せだった。
やがて、壮年になった彼が来る。
家が欲しい、結婚したいと言う。木は、枝で家を建てるよう勧めた。
枝を切って、彼は去る。
木は、幸せだった。
中年になった彼がまた来る。
遠くへ行くために、ボートが欲しいと言う。木の勧めで、
彼は、幹を切り倒し、ボートを造って去った。
長い年月がたった。
老人になった彼が、戻って来た。
木は、切り株だけになった自分の上で、休むよう勧める。
彼は、言われるままにした。
木は、幸せだった。
by シェル・シルバスタイン