2019.11.13
くもりです。
豊田市 漢方薬
❮ 新月譚 ❯ by 貫井 徳郎
わたしは苦しかった。
かつて、わたしは恋愛の苦しみなど、贅沢な悩みだと思っていた。
苦しみを味わえるだけ、幸せではないかと、冷ややかに考えていた。
だが、実際には、苦しみを甘美と感じる余裕ない。
苦しみは苦しみでしかない。
いっそ、何もなかった灰色の日々が懐かしいほどだ。
苦しみは日ごとに先鋭化し、わたしの心に穴を穿つ。