成原漢方薬局

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漢方日記

2014.03.26

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彼は困っていた。事の起こりは、神父である彼のもとに、

一人の男が、懺悔にきた事である。

 『 実は、私は殺人者なのです。』

 その男は、自分はある殺人事件の真犯人であると告白した。

 その事件では、既に容疑者が逮捕されており、

死刑の判決をうけていた。

 当然、彼は、その男を警察に通報すべきであろう。

だが、神父である彼は、懺悔の内容を、

他人にもらすことはできない。

 彼は悩んだ。もしこのまま彼が沈黙すれば、

一人の無実の人間が、殺されることになる。

彼は、ジレンマに陥った。

 とうとう、彼は、沈黙を守る事にした。

そして、彼は友人の神父の所へ懺悔に行った。

 『 私は、無実の人が殺されるのを、見過ごそうとしています。』

彼は、事のいきさつを告白した。

 困ったのは、友人の神父である。

彼もまた悩んだあげく、沈黙を守り、

 良心の呵責からのがれるために、

別の神父のもとに、懺悔に行った。

 
 『 何か、言い残す事はないか。』

神父が、死刑囚に尋ねた。

 『 私は、無実です。』

死刑囚は、叫ぶように言った。

 『 それは、判っています。』

神父は、答えた。

 『 あなたが、無実であることは、国中の神父が、

  知っています。でも、

  本当の事を言えないのです。』

       by 佐々木 大善

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