「 お前、世の中に嫌なヤツなんて、
いないと思ってたか?」と、主任は笑った。
「 いや、そりゃいると思いますけど 」と答えると、
「 そうだよ。残念ながらいるんだよ 」とまた笑い、
「 あの人、震えてたろ?」
と、聞いて来る。俺は何も答えなかった。
「 上に立つ素質がなくても、上にたたされることがあんだよ。
ある意味、悲劇だぞ 」 主任は言った。
「 先を走っているヤツがどんな顔して、
走っているか、後ろからは見えないだろ。
あんがい目に涙ためて、
必死の形相で走ってることもあんだよ 」 と。