多くの人が自殺している。　自らの手でこの世を去った人たちをおもうとき、

病で、この世を去らざるを得なかった、患者さんたちのことを、思い出す。

　『　死んだらあかん。　』　と、小学　３　年と　小学　５　年の男の子が、

泣き叫ぶのを、聞きながら逝った　３５　歳の母親。

　死ぬのは怖くないが、障害のある子のことだけが、気がかりと言った　42　歳の母親。

　２０　年間も取り組んできた、古代史の翻訳を、完成間近に止められた　

５４　歳の男性など、

　もし、この人たちが、自殺しようとする人たちに会えたら、きっとこう言うだろうと思う。

　『　命を捨てるぐらいなら、私に下さい。あなたの苦しみや悩みも付けて下さっても、

　構いませんから。私は、生きたいのです。』

　もとより、自殺した方々の、深い悩みは理解できない。

　ただ、亡くなって行った私の患者さんたちには、次のことを、確信を持って言える。

　激痛の中にありながら、もし、自殺しようとする人が、救われるなら、

　その方の、心の苦しさを、譲り受けることに、承諾して下さるに違いない。

　死を受け入れた彼らは、それほど、優しかった。